研究所概要

研究方針

 外国手話研究部は、日本手話研究所発足後に「国際部」として組織されたのが始まりです。その後、組織規定の一部改正により、1997年以降は現在の「外国手話研究部」という名称に改められました。この研究部は発足当初から、日本手話と外国手話の対象研究および、日本手話を諸外国へ紹介することを課題にしています。
 
 本研究部は、1995年から開始されている「ろう者のための指導者コース」(JICA:独立行政法人国際協力機構が各国のろう者リーダーを招聘しておこなう研修プログラム)で10年間にわたり「アジア手話セミナー」を主催してきました。この間、各国ろう者リーダーの手話表現を収録して貴重な研究資料を収集するとともに、多くの日本のろう者や健聴者に各国のろう者と触れ合う機会を提供してきました。
 
 セミナーの主催は2004年で終了しましたが、諸外国の手話収集は現在も継続しています。最近は調査対象国をアジア太平洋から南米、アフリカにまで拡大し、固有名詞などを中心に手話語彙収集をおこない、研究成果を発表しています。外国手話研究部の活動は、日本と諸外国のろう者との交流を活性化し、相互の異文化理解と尊重につながるものです。
 

研究内容

アジア太平洋諸国を中心に各国の固有名詞の手話表現を収集し、それぞれの国や地域に存在する固有手話の研究を継続しています。
 
 2008年は南米のエクアドルとコロンビア、さらにアフリカのウガンダも調査対象国に加え,主に各国の地名、人名、公用語、通貨、宗教、民族名、食べ物などの手話表現を収集しました。本研究の成果は、2008年2月3日に日本手話研究所第7回手話研究セミナー(全国手話研修センター・日本手話研究所主催)で一般に公開しました。
 
 2009年は、これまで収集した外国手話単語のデータベースを整備保存し、ウェブサイト等でデータの一部を外部公開することをめざしています。また、特に、諸外国の地名・人名に関する手話をとりまとめ、将来的に「地名・人名手話ガイドブック」(仮称)の編集をめざします。

研究成果の活用

1.日本手話語彙を海外に紹介するため、英語版日本手話単語集を編集しました。An English Dictionary of Basic Japanese Signsと題するこの単語集は、総ページ数309、生活基本語を中心に466の日本手話語彙がイラストと、解説文で紹介されています。
 
2.『アジアの手話事情』は、韓国、ネパール、タイからろう者リーダーを招聘し、「アジアリーダー研修会」を開催したときの成果報告書です。
 
3.『アジアの手話』シリーズ全5巻は、10年間開催してきた「アジア手話セミナー」での研究成果報告書です。アジア各国の手話事情が学べるほか、それぞれの国の手話語彙が写真と文章で紹介されています。
 
4.外国手話研究部は,研修および招待講演などで来日された海外のろう者や手話研究者と 面談する機会を積極的に作っています。『海外のろう者・手話研究者との談話』は、これらの一部(フィリピンのろう者および韓国とフィリピンの手話研究者との談話)をとりまとめたものです。これは内部資料として編集したもので、一般に販売されていませんが、部外の方でも閲覧は可能です。詳細は全国手話研修センターにお問い合わせください。
 
5.手話言語研究所が年に1回開催している「手話言語研究セミナー」において、1年間の研究成果を発表しています。
 
6.『手話コミュニケーション研究』第33号では、「韓国のろう者と手話」を特集し、韓国(ソウル)で手話事情の現地調査を実施した結果を報告しました。
 
7.『手話コミュニケーション研究』第37号では、「中国のろう者と手話」を特集し、中国(北京、天津、上海)で手話事情の現地調査を実施した結果を報告しました。
 
8.『海外のろう者・手話研究者との談話』(外国手話研究部資料集)の作成
  ・キャロル・コバー氏との座談会
  ・金七官氏との研究交流会
  ・リサ・マルティネス博士へのインタビュー
 
9.「海外のろう者へのインタビュー」当ウェブサイトにて掲載
 財団法人日本障害者リハビリテーション協会のご協力を得て、「ダスキン・アジア太平洋リーダー育成事業」で来日している研修生にインタビューを行い、諸外国の手話事情に関する情報収集を行っております。

外国手話研究部 研究員

  • 部長

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