(13)インドネシア
2023年11月10日、東京のスタジオにてダスキン研修生のリエカさん(インドネシア)にインタビューした内容を紹介します。
※本インタビューは、話者の主観で語られている部分があり、実情と異なる場合があります。予めご了承ください。
リエカさんへのインタビュー

研究員:自己紹介をお願いします。
リエカ:はい、私の名前はリエカです。サインネームは(左胸に両手であてる)こうです。インドネシア出身です。大学を卒業しましたが、聴者とろう者と一緒に学びました。
研究員:小さい時からインテグレーションを経験したのでしょうか。それともずっとろう学校に通いましたか。
リエカ:小さいときからろう学校というか身体障害のある学校にいました。ろう、盲、肢体などのクラスがあって1つの建物でした。教員は聴者でした。
研究員:あなたはずっとろう仲間と一緒に学びましたか?
リエカ:はい、そうです。大学に入ってから多くの聴者と一緒に学びました。
研究員:大学では何の専攻でしたか?例えば教育、数学専攻とか。
リエカ:私はマネジメントを学びました。インドネシア語も英語もありました。もちろん手話通訳付きでした。
研究員:はい、経営に関する専攻ですね。わかりました。さて、インドネシアでのろう者は何人いるでしょうか?
リエカ:たぶん全部で25万人位です。
研究員:中途失聴・難聴も含まれていますか?
リエカ:はい、そうです。
研究員:ろう者は何人か知っていますか?
リエカ:いいえ、わかりません。
研究員:ろう学校はいくつあるでしょうか?
リエカ:ろう学校はいくつかありますが、聴教員が多いです。最近、新しくできたろう学校では手話教育を行っています。ろう教員がいるのです。ろう児も手話で学んでいます。
研究員:以前は口話教育だったろう学校は手話教育に変わったのですか?
リエカ:いいえ、初めから手話教育のある学校ができたのです。
研究員:つまり1つだけですか?他のろう学校は口話教育ですか?
リエカ:他に2つあります。どこかといえば、バリ島にあります。ろう教員もいますが、手話ができる聴教員も何人かがいます。最初話した学校では全てろう教員で、ろう児に手話で教えています。
研究員:そこは、ジャカルタですか?
リエカ:いいえ、近くです。ブカシという都市です。ジャカルタから1時間半位離れています。
研究員:そうですか。ろう教員がたくさんいるでしょうか?
リエカ:そうですね。
研究員:ろう教員たちはみんな大学を出ていますか?
リエカ:いいえ、大卒のろう者も高卒のろう者もいます。
研究員:大学を出て教員試験を受けてからろう学校の先生になるのですね?
リエカ:はい、そうですが、教員になる前に実習もあります。自分に合った小・中・高等学部にで教育を行います。
研究員:ありがとうございます。さて、ろう協会が多くありますか?
リエカ:はい、あります。ろう協会はジャカルタにあり、各地方に傘下団体があります。もう一つのコミュニティの中に趣味仲間や若者が集まるところもあります。
研究員:それはクラブですか?
リエカ:いいえ、コミュニティの中にあるのです。
研究員:ろう協会の外にあるのですか?それともろう協会の中にあるのですか?
リエカ:いいえ、別々です。ろう協会は活動や行事などがありますが、もう一つの集まりは若者の活動をしています。
研究者:ろう協会はいくつあるでしょうか?
リエカ:たくさんあるので数えられません。
研究員:つまりジャカルタもバリ島もあるのですか?
リエカ:はい、ブカシもそれぞれあります。
研究員:すべての都市にあるのですね?
リエカ:はい、すべてあります。
研究員:すごいですね。ろう協会はいつできましたか?
リエカ:1984年頃だと思います。
研究員:40年くらい前ですね。
リエカ:はい。そうですね。
研究員:多くのろう者はどんな仕事をしていますか?
リエカ:(上を見て考え中)先生をしている人もいますし…
研究員:ろう医者はいますか?
リエカ:いないです。あっ、歯医者さんいました。
研究員:看護師はいますか?
リエカ:いいえ、いません。
研究員:弁護士はいますか?
リエカ:いいえ、いません。身体障害者に関する法律はありますが、ろう弁護士はいません。
研究員:ろう者はの主な仕事は何ですか?
リエカ:聞こえないため断られ、無職のろう者が多いです。雇用を増やすための活動が功を奏し、障害者に関する法律が制定されましたが企業の受け入れ状況はさまざまです。いつか、働くろう者が増えると信じています。
研究員:障害者雇用が制定されてから企業に入りやすくなったでしょうか?
リエカ:はい、2人から3人のろう者が入れる企業もあれば多くのろう者がよく目を使う手作業を行っている企業もあります。
研究員:わかりました。さて、ろう者のための大学はありますか?
リエカ:いいえ、ありません。
研究員:ろう者は一般大学に入って聴者と一緒に学ぶのですね。多くのろう者は何の専攻をしていますか?
リエカ:いろいろあります。しかし、医学系は無理です。
研究員:歯医者さんがいますが?
リエカ:歯医者さんになったろう者は別の大学で学んだと思います。ろう者は大学には簡単に入れませんでした。今は入れます。
研究員:歯医者さんは中途失聴者ですか?
リエカ:いいえ、ろう者です。口話教育を受けた人です。
研究員:さて、国から年金などもらいますか?
リエカ:全くありません。
研究員:国に要求しませんでしたか?
リエカ:要求したかどうかわかりませんが、私は年金をもらったことがありません。
研究員:ろう者は仕事もなくお金もなくどうやって生活をしていますか?
リエカ:ろう者は家族の支援で暮らしています。私は大学で勉強をしながら家での手伝いをしていました。年金はもらっていません。
研究員:給料は聴者とろう者との差はないですか?
リエカ:差はありません。公平です。実力によるものです。
研究員:手話通訳者は多くいますか?
リエカ:多くいます。
以前はいませんでした。インドネシアは広いのでカリマンタン島は2人から3人います。ジャワ島の方が多くいます。スマトラ島は3人から4人位です。バリ島も3人位です。ジャワ島の大学は優秀な人が集まります。そこの大学を卒業した後、自分の島に帰ります。
研究員:手話通訳者養成はろう者が担っていますか?
リエカ:はい
研究員:通訳者養成に行って試験に受かったらもう一人前になるのですか?
リエカ:そうですが、養成の後、ろうの集まりに参加して学びます。理解できたら試験を受けます。
研究員:確認ですが、養成の後、ろう者の集まる場で学んでから試験を受けるのですね?
リエカ:はい、ろう者の集まる場は地方によって手話表現が違うので読み取ることができるように通訳または翻訳などを学びます。手話通訳者はいつものろう者ではないので緊張してしまったり、通訳中、読み取れなかった手話をもう一回尋ねたりすると困るので。ろう文化や手話について理解している通訳者はろう者とのコミュニケーションは齟齬がなくスムーズになります。
研究員:そうでしたか。通訳の養成はインドネシアの中に1か所だけですか?
リエカ:いいえ、地方の手話が違うので各地で養成を行っています。
研究員:通訳試験の採用責任者は誰ですか?ろう協会の役員ですか?
リエカ:ろう者が評価します。ろう協会で法律ができたのですから。
研究員:わかりました。さて、日本に来てから3週間目になりますね。インドネシアとの違いなど、感じたことを教えてください。
リエカ:日本は美しいです。技術面がすごいです。
研究員:技術面といえば何でしょうか?
リエカ:駅の改札口のところ、IC入場サービスです。簡単にタッチで入場できますね。インドネシアの場合はタッチしても待つ必要があるのです。
研究員:そうですか。文化の違いはありますか?
リエカ:礼儀ですね。お辞儀するので相手を尊重している感じです。
研究員:馴染めないところ、または壁にぶつかったことはありますか?
リエカ:生活面や手話でのコミュニケーションは問題がありませんが、大きな壁は「言語」です。日本語の勉強をしないといけないです。日本では中国語、韓国語、英語、日本語ありますね。インドネシアで英語の勉強をしておけばわかりますが、やっぱり文字言語が難しいです。
研究員:そうですね。馴染みやすいところはありますか?
リエカ:迷子になったことがないです。なぜかというと、案内がわかりやすいからです。わざわざ人に尋ねる必要がないのです。インドネシアよりも簡単です。
研究員:そうでしたか。ありがとうございました。