刊行物

医療系大学等における聴覚障害学生への講義保障のための調査研究事業報告書

平成20年度障害者保健福祉推進事業(障害者自立支援調査研究プロジェクト)

2001年に「障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の一部を改正する法律」の制定により、聴覚障害学生が医学部、歯学部、薬学部、獣医師学部、看護学部等医療系の高等教育機関に入学するケースの増加が推定されています。そこで(福)全国手話研修センターではこれらの医療系高等教育機関における聴覚障害学生の在学状況、講義や実習保障の実態を把握し、今後の医療系高等教育機関における聴覚障害学生への修学支援のあり方を検討することを目的に本事業を実施しました。

委員名簿:
委員長 垰田 和史(国立大学法人滋賀医科大学准教授)
委員/事務局長 大杉 豊(国立大学法人筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター准教授、社会福祉法人全国手話研修センター日本手話研究所事務局長)
委員  河原 雅浩(財団法人全日本ろうあ連盟理事)
委員  近藤 幸一(全国手話通訳問題研究会副運営委員長)
委員  柴田 浩志(特定非営利活動法人全国聴覚障害者情報提供施設協議会副理事長)
委員  白澤 麻弓(国立大学法人筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター准教授)
委員  新中 理恵子(日本手話通訳士協会理事)

全国の医療系高等教育機関(1,162校)にアンケートを実施した第1次調査、245機関に絞り込んでアンケートを実施した第2次調査、及び8機関への訪問調査を通じて明らかとなった課題と提言を報告書に以下の見出しでまとめました。

(1)聴覚障害の受容/認識に関わる問題
(2)基礎専門教育の開始とともに爆発的に増える学習内容(新しい単語、概念)に当該学生の高校まで(正確には、大学の教養時代まで)の学習方法では太刀打ちできなくなる問題
(3)授業において、学習情報が十分得られない中で必死に努力し心身が疲労困憊し、授業への参加が消極的になっていく問題
(4)当該学生の自己判断による授業への欠席や疲労による遅刻などの積み重ねにより、支援しようとする教職員や学生との間に生じるズレ・誤解の問題
(5)聴覚障害学生が、学内で孤立化しやすい問題
(6)聴覚障害学生の支援業務が特定の教職員に集中し、課題克服の方法が見つからず学生支援が行き詰まりやすくなる問題
(7)高度のコミュニケーション保障すなわち手話通訳利用について
(8)医療系高等教育機関における聴覚障害学生の修学支援経験の集積・利用システムの必要性について

今後は、ますます医療系高等教育機関に学ぶ聴覚障害学生が増加することが予測されることから、今回の調査結果が聴覚障害のある高校生や、聴覚障害のある学生を受け入れた医療系高等教育機関に利用されることを切に希望します。

2009年3月31日
社会福祉法人全国手話研修センター

調査結果の詳細は下記の「報告書」にてご覧いただけます
報告書 A4判 104ページ
2009年3月31日発行
発行 社会福祉法人全国手話研修センター
担当 日本手話研究所事務局